本書は、1976(昭和51)年出版された単行本を文庫としたものである。内容は、昭和
20年代に発生した
帝銀事件、
下山事件、
松川事件等において米キャノン機関等の
諜報機関員が直接的間接的に関わっていたことを多くの証言から考察している。
著者曰く、本書を書くきっかけは、
ロッキード事件である。本書によれば、
ロッキード事件は米中央情報局(CIA)が暴露したものであったという。CIAの狙いは韓国の朴政権が経済と政治の両面の危機を脱するために企てていた戦争の実行を阻止することにあり、韓国と深い関わりがある日本の政界の暗部を公にすることによって、戦争を防ぐことにあった、という。
米
諜報機関の日本における暗躍について、多くの日本人は知らない。そのため、
ロッキード事件もCIAが暴露したものとは多くの日本人が信じない。それ故、本書では、米
諜報機関が日本で活動していた過去の事件を拾い上げ、明らかにしている。日本の戦後の裏面史について生き証人から得た多くの証言を紹介しており、別の視点から昭和史が見えてくる非常に味わいのある一冊である。
本書で紹介されている数々の事件の中でも、
イサム・ノグチ氏の話は興味深いものであった。
李香蘭こと
山口淑子と結婚した彫刻家
イサム・ノグチ氏は、日本で新婚旅行中、キャノン機関にマークされていた。しかし、キャノン機関の尾行から難なく逃れたり、ノグチ氏の車に小細工をしようとしたキャノン機関員の車を逆に動けなくさせたりした話は、痛快だった。それとともに、ノグチ氏がキャノン機関に尾行された背景として、同人が
コミンフォルム(国際
共産党の情報機関)のレポ(連絡員)であったという、あまり表に出てきていない話が紹介されている。
著者である畠山清行氏は、陸軍の
中野学校についての第一人者で、「
秘録・陸軍中野学校 (新潮文庫)」の著者でもある。本書は、多くの諜報関係者に取材した経験を基に執筆されており、歴史の別の見方に接する観点から貴重な書物といえる。 (2011/12/11)
なかなか面白そうな内容なので~、本が届くのが楽しみだな~^^